広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.198 『これってホントにエコなの?』ジョージーナ・ウィルソン=パウエル 吉田綾 監訳 吉原かれん 訳/東京書籍
蔦屋書店・竺原のオススメ『これってホントにエコなの?』ジョージーナ・ウィルソン=パウエル 吉田綾 監訳 吉原かれん 訳/東京書籍
エコと言うともはや聞き慣れた言葉ではあるが、実際問題自分自身がエコに向かって何かに取り組みたいと思っても、では何をすれば良いのか、もっと言えば何をすれば良いのかわかっても、それが本当に正しい事なのかどうかを判断するのは中々どうして難しい事である。
本作はタイトル通り「これってホントにエコなの?」という疑問を、日常生活の様々なシーンを題材にして抜き取り解説するという、痒いところに手が届く様な一冊だ。
本作はタイトル通り「これってホントにエコなの?」という疑問を、日常生活の様々なシーンを題材にして抜き取り解説するという、痒いところに手が届く様な一冊だ。
著者のジョージーナ・ウィルソン=パウエル氏は、その経歴も面白い。
作中の「はじめに」によると、1980年代生まれの多くの子どもの様に、電子レンジで温めるフライドポテトを食べ、使い捨てプラスチックでいっぱいのパーティーに参加し、大量生産されたファッションで満たされた生活をして来て、その当時からすればおよそこの様な類の本を執筆する事になるとは予想も出来ない生い立ちだ(本人も「オーガニック農園で野菜を栽培しながら育ったとでも言えたら良いが」とウィットを利かせている)。
作中の「はじめに」によると、1980年代生まれの多くの子どもの様に、電子レンジで温めるフライドポテトを食べ、使い捨てプラスチックでいっぱいのパーティーに参加し、大量生産されたファッションで満たされた生活をして来て、その当時からすればおよそこの様な類の本を執筆する事になるとは予想も出来ない生い立ちだ(本人も「オーガニック農園で野菜を栽培しながら育ったとでも言えたら良いが」とウィットを利かせている)。
およそ10年前まではドバイで旅行雑誌の編集者として、飛行機で世界中を飛び回る生活をしていたものの、年に25回以上も利用するフライトのカーボンフットプリント(活動/製品/個人/組織/サービスによって直間接的に発生する温室効果ガスの排出量)を思うと、それは社会にはプラスにならないだろうという罪悪感に駆られ、以降ドバイを離れてからは様々な方法で気候危機に立ち向かっている人々と出会い、そうした人々の活動を何らかの方法で紹介したいと思う様になり、2016年にスタイリッシュでサステナブルな生活を紹介する無料のデジタル雑誌『pebble』を立ち上げるに至ったとの事。
上述の通り、著者自身がそもそもいわゆる大量生産大量消費型の生活を享受して来た人間であり、そうした生活が持つ良さや魅力を十分に理解した上でもう一方の選択肢=グリーンな生活を提示している点が本作を興味深くしている要素の一つであると感じる。
環境問題を考えたり論じたりする事はいかにも壮大な事の様に思う節があるが、例えば「いちばん環境に優しいコーヒーの淹れ方とは?」「最もグリーンな仕事場所とは?」「死後もグリーンでありたいなら?」といった具合に、我々からしても身近なトピックをピックアップしてくれているのも関心の導線として作用する事だろう。
環境問題を考えたり論じたりする事はいかにも壮大な事の様に思う節があるが、例えば「いちばん環境に優しいコーヒーの淹れ方とは?」「最もグリーンな仕事場所とは?」「死後もグリーンでありたいなら?」といった具合に、我々からしても身近なトピックをピックアップしてくれているのも関心の導線として作用する事だろう。
ちなみに作中には「電子書籍と紙の書籍、よりグリーンなのはどっち?」という項目があり、加えて「そもそも、この本はグリーンなの?」という文章もある。
本と言うと勿論紙を使用する事になるし、紙の原料は木であるし、そうなると森林保全の問題にも繋がるので、いわばこの本を出版する事自体が矛盾を孕んでいるという見方も出来る訳であるが、その点にも先んじて言及し、その理由もしっかりと説明しているのは自身を客観視出来ている証拠でもあるし、さすがに抜け目がないなと感心した次第である。
本と言うと勿論紙を使用する事になるし、紙の原料は木であるし、そうなると森林保全の問題にも繋がるので、いわばこの本を出版する事自体が矛盾を孕んでいるという見方も出来る訳であるが、その点にも先んじて言及し、その理由もしっかりと説明しているのは自身を客観視出来ている証拠でもあるし、さすがに抜け目がないなと感心した次第である。
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