広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.162
蔦屋書店・江藤のオススメ 『チ。ー地球の運動についてー』 魚豊/小学館
非常に衝撃を受けて、しかもめちゃくちゃ面白くて、先が気になってしかたがないコミックを見つけましたので、ぜひみなさまに紹介させてください!
『チ。―地球の運動についてー』という作品です。
舞台はP王国といわれる15世紀のおそらくはヨーロッパのどこか。
この時代は、神が絶対で、その宗教はC教と表記されているのですが、神の教えに背く者、その教えと違う考えを持つ者は、異端とされる時代です。
しかも、異端ではないかと疑いを持たれただけで、捕らえられ拷問を受け、異端ではないと認められると一度は釈放されるのですが、異端の疑いを二度受けると例外なく生きたまま火炙りにされ殺されてしまうのです。
この時代は、神が絶対で、その宗教はC教と表記されているのですが、神の教えに背く者、その教えと違う考えを持つ者は、異端とされる時代です。
しかも、異端ではないかと疑いを持たれただけで、捕らえられ拷問を受け、異端ではないと認められると一度は釈放されるのですが、異端の疑いを二度受けると例外なく生きたまま火炙りにされ殺されてしまうのです。
場所や宗教はあえて仮の名前で表記されていますが、これは歴史的事実に基づいている物語です。異端の考えを持つ者、異端の研究をする者は厳しく取り締まられ、簡単に殺されていた時代の物語なのです。
そしてこの物語では、タイトルを見て分かる通り、地球の運動について書かれています。
「地球の運動」つまり「地球は動いている」それは「地動説」です。
「地球の運動」つまり「地球は動いている」それは「地動説」です。
この時代、天動説こそが神の作った世界の真の姿だと信じられ、地動説を唱えることは異端の象徴でした。そんな研究をしているものは捕らえられ死刑になっていたのです。
第1集に登場する少年は、とても要領の良い子どもでした。
大人たちの顔色を伺い、要領良く立ちふるまい、勉強もできた。そして12歳で大学に合格してしまいます。
彼の信条は、この世を合理的に生きるということで、この世界はなんてチョロいんだと思っているような少年でした。
大学では、義理の父親の進めで神学を学ぶ道に進むと宣言するのですが、実は彼の本当の興味は天文学にありました。もちろん彼は天動説を信じ、異端の研究をするものなどバカにしています。
大人たちの顔色を伺い、要領良く立ちふるまい、勉強もできた。そして12歳で大学に合格してしまいます。
彼の信条は、この世を合理的に生きるということで、この世界はなんてチョロいんだと思っているような少年でした。
大学では、義理の父親の進めで神学を学ぶ道に進むと宣言するのですが、実は彼の本当の興味は天文学にありました。もちろん彼は天動説を信じ、異端の研究をするものなどバカにしています。
しかし、彼は出会ってしまうのです。
異端の研究をする者と、そして、そこに隠されている、本当に美しい真実を。
異端の研究をする者と、そして、そこに隠されている、本当に美しい真実を。
ここで、私が考える物語の面白さ、というか、味わい方についてちょっと書いてみたいと思います。
物語の分け方のひとつとして、先がわかっている物語と先がわからない物語があると思っています。
先がわかっている物語というのは、例えば、史実に基づいた物語であったり、ノンフィクションなど。また、極端な例を出すと、一度読んでストーリーを知っている物語もそれに当たります。
先がわからない物語とは、例えばミステリー小説や完全なフィクションです。先がわからないので、一体どんな結末が待っているのかわからない面白さがあります。
それで言うと、現在の私達は地球が動いているということは、常識として知っています。
つまり、このコミックの中で異端として殺され続けている地動説を唱える人たちは最終的には正しいものであると認められるはずです。であれば、この物語は、本当は正しい地動説がどうやって世界に認められるのかを描くものであるというのは容易に想像が付きます。
つまり、このコミックの中で異端として殺され続けている地動説を唱える人たちは最終的には正しいものであると認められるはずです。であれば、この物語は、本当は正しい地動説がどうやって世界に認められるのかを描くものであるというのは容易に想像が付きます。
ここで、先がわかっている物語なんて面白いのだろうか?
と思っている人がいるかもしれません。
しかし、先がわかっているからこそ面白いのだ、というのはこの世の中にはいくらでもあるのです。
と思っている人がいるかもしれません。
しかし、先がわかっているからこそ面白いのだ、というのはこの世の中にはいくらでもあるのです。
先程例にあげた史実に基づく物語では、例えば歴史小説などもそうです。
例えば、この先のあの戦いでこの登場人物は死んでしまうとわかっているからこそ、ここの場面が胸に染み入るということはないでしょうか。
例えば、この先のあの戦いでこの登場人物は死んでしまうとわかっているからこそ、ここの場面が胸に染み入るということはないでしょうか。
例えば、こんなにひどい扱いを受けている人がいる、だが、彼はこの後時代を動かすような大発見をして世間の評価が一変する、というのを知っている私達は、つらい場面を読んでいても
「大丈夫、この後彼は、、、お、くるか、、くるのか、、、キターー!!」
と、その山場が来ることがわかっているからこそ味わえるカタルシスに酔うことができる。
「大丈夫、この後彼は、、、お、くるか、、くるのか、、、キターー!!」
と、その山場が来ることがわかっているからこそ味わえるカタルシスに酔うことができる。
例えばどこかに行くときも、目的地がわからないまま、ただ連れて行かれているときは、周りの景色を楽しむことなど出来ず、不安なまま目的地に向かい、目的地に着くだろう。
しかし、それが二度目であればどうだろうか、途中の景色を楽しみ、そして到着するタイミングもわかるので、高まる期待と到着の喜びをベストな状態で味わうこともできるはずだ。
しかし、それが二度目であればどうだろうか、途中の景色を楽しみ、そして到着するタイミングもわかるので、高まる期待と到着の喜びをベストな状態で味わうこともできるはずだ。
もう一つ例を挙げると、好きなアーティストの新曲も、一度目ではその良さがわかりにくいことがあると思う。しかし、何度も聞くことで、その曲の構造を無意識に理解して、山場がわかり、存分に味わうことができるようになれば、どんどん良い曲だと思えてくることはないだろうか。
このように先がわかっているからこそ楽しめるということがあるのだが、更に言うとその上にはもう一つ、最高に面白い物語があると思っている。
それは、知っているあれに基づいて進んでいくのだが、大筋でははずれていないのだが、読者が知っているはずの先が見えなくなってハラハラして、そして気がついたら知らないところに連れて行かれているのでは?と自分の足元が不安になる。
そんな物語だ。
そんな物語だ。
そしてまさに、この『チ。―地球の運動についてー』がそうなのだ。
人は絶対的な真実、美しい真理、からはどうしても目をそむけられない生き物だということを徹底的に描いている。そしてその先に間違いなく死が待っているとしても、軽く嘘を付けばそれは回避できるとしても、真実を知りたいという気持ちには抗えない人間の不思議さ、そしてその美しさ、気高さに、その熱に、私は感動してしまう。
その愚かさも含めて人間には信じるに値する価値があるのだと感動してしまう。
その愚かさも含めて人間には信じるに値する価値があるのだと感動してしまう。
この物語はまだ始まったばかりだ。
第1集には衝撃的なラストが待っている。
しかし、そこから物語は本格的に始まるのだ。
ケレン味たっぷりで、映画的手法を用いた演出も
この絵柄、そしてこの物語には最高にハマっている。
第1集には衝撃的なラストが待っている。
しかし、そこから物語は本格的に始まるのだ。
ケレン味たっぷりで、映画的手法を用いた演出も
この絵柄、そしてこの物語には最高にハマっている。
この物語がどこに向かって進んでいくのか。
ちゃんと知っているところにたどり着くのか。
期待して、一緒に見届けようではありませんか。
ちゃんと知っているところにたどり着くのか。
期待して、一緒に見届けようではありませんか。
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