広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.345『青ノ果テ ー花巻農芸高校地学部の夏ー』伊予原 新/新潮文庫
蔦屋書店・神崎のオススメ『青ノ果テ ー花巻農芸高校地学部の夏ー』伊予原 新/新潮文庫
宮沢賢治によって『銀河鉄道の夜』の初稿が書かれてから約100年。壮大な宇宙を舞台に星を巡る旅は現在も輝きを失うことなく、多くの人々に愛され、読まれ続けている。
『青ノ果テ』は宮沢賢治の出身地岩手県花巻市で賢治が教鞭を執った高校をモデルに描いた「花巻農芸高校」を舞台にした青春小説だ。作品全体が賢治へのオマージュであふれ、賢治や『銀河鉄道の夜』をよく知らなくても、その世界に触れ、感じることができる。
花巻農芸高校に通う江口壮多は鹿踊り部で全国高校総合文化祭ー略して「総文」を目指している。同じクラスで美術部の佐倉七夏とは幼なじみ。5月連休明けのある日、一人の男子生徒が東京から転校してくる。名前は深澤北斗。どこか秘密めいていて、なんだか以前から七夏のことを知っているような雰囲気だ。壮多は深澤を監視するため、イギリス海岸で出会った三年生の三井寺が立ち上げた地学部に七夏と深澤とともに参加する。
地学部は夏休みに賢治が描いた理想郷「イーハトーブとは、どこか」をテーマにゆかりの地を巡る自転車旅行、巡検を計画する。そんな時、七夏が突然姿を消した。「カンパネルラの死なない世界って、どこにあるのかな」と呟いて。
けがで鹿踊りのメンバーを外れた壮多は深澤、三井寺とともに巡検に参加する。旅も終盤に差し掛かったころ七夏からメールが届く。「わたし、青の果てがどんな色か、わかった気がする」と。
やがて深澤が抱えていた秘密も明らかになっていく。なぜ花巻農芸高校に入ったのか、なぜ七夏を知っていたのか、そして深澤と壮多の関係も。
けがで鹿踊りのメンバーを外れた壮多は深澤、三井寺とともに巡検に参加する。旅も終盤に差し掛かったころ七夏からメールが届く。「わたし、青の果てがどんな色か、わかった気がする」と。
やがて深澤が抱えていた秘密も明らかになっていく。なぜ花巻農芸高校に入ったのか、なぜ七夏を知っていたのか、そして深澤と壮多の関係も。
宮沢賢治という大きな星を中心に描かれる壮多、七夏、深澤、三井寺のひと夏の出来事は、どこか切なくもあり、清々しくもある。彼らの前に広がる未来はきっと明るいに違いない。
「青春ってこうだよね」「青春ってこうでなくっちゃ」。そう思わせる作品だ。