広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.150

蔦屋書店・作田のオススメ 『ミステリなふたりア・ラ・カルト』太田 忠司/創元推理文庫
 

 
様々なところに本との出会いはあります。
 
わたしは書店員なので職場だったり、他の書店だったり、図書館だったりなどなど
わたしにとって大好きな時間でもあります。
 
そして最近特に増えているのが人を通しての本との出会いなのです。
 
『ミステリアスなふたりア・ラ・カルト』もそんな1冊です。
 
ミステリーは好きな方なのですが、読んでない本や知らない作家は数え切れないほどです。
そんななか、読書会を通して知り合った本好きの人に教えていただいた本です。
そして読んでみると、美味しそうな料理と謎解きの面白さ、登場人物のキャラクターにすっかりはまってしまいました。
 
言葉を発すると、同僚はもちろん上司たちすらも何も言えなくなる氷の女王、京堂景子警部補が主人公。
仕事の顔はまさく女の仮面を被っている男そのもの。
部下の生田刑事に対して
「言いたいことがあるなら、言え」とか
「無駄口は叩くな」等。
見るものを凍らせる冷たい視線と常に冷静沈着で笑顔ひとつみせない性格なのです。
 
しかし彼女にはもうひとつの顔があるのです。
難事件を追う業務から開放されて、唯一伴侶である新太郎にしか見せない、かわいいデレデレ女子の顔です。
家のドアを開けるなり
「しんたろーくーん」から始まり
「あーもー、疲れたあ… !」
と言いながら脱いだ靴を爪先で跳ね飛ばし、その勢いでバランスを崩しながら夫にしなだれかかり新太郎氏が引きずりながらリビングダイニングに連れて行ってあげるのです。
 
イラストレーターを本業としているのですが、主夫でもある彼が作る料理とお酒に
「うん、美味しい!これ、美味しいわよ」と大喜び。
食後のお酒を飲みながら
「食後の酒、たまんないわね」等の会話をしつつ、あるときは夫婦共犯?殺人事件だったり、テレビ番組から生まれたアイドル連続殺人事件だったり、被害者自らが誘拐犯を演じた殺人事件等、様々な難事件についておしゃべりをします。
というのも、実は伴侶である新太郎氏は料理の腕もさることながら景子嬢が抱えている事件の真相やヒントを与えてくれる頼もしさも兼ね備えている、安楽椅子探偵のような顔も持っているのです。
 
犯人探し、事件に至るまでの流れ、犯罪を犯してしまった経緯等、読むごとに見えてくる真相。
ミステリーの面白さを今更ながら教えてくれた作品です。
 
でも空腹時に読むのは遠慮しておいたほうが良いかもです。
各章ごとに出てくる新太郎氏作の料理たちに気をとられてしまうかもしれませんので。

 
 
【Vol.149 蔦屋書店・江藤のおすすめ   『きのうのオレンジ』】 
【Vol.148 蔦屋書店・竺原のおすすめ   『諏訪式。』】
【Vol.147 蔦屋書店・犬丸のおすすめ   『ヘテロゲニア リンギスティコ 〜異種族言語学入門〜』】
【Vol.146 蔦屋書店・神崎のおすすめ 『ベージュ』】
【Vol.145 蔦屋書店・江藤のおすすめ 『日没』】
【Vol.144 蔦屋書店・河賀のおすすめ 『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』】
【Vol.143 蔦屋書店・作田のおすすめ 『夜中の薔薇』】
【Vol.142 蔦屋書店・丑番のオススメ 『本の雑誌の坪内祐三』】
【Vol.141 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。】
【Vol.140 蔦屋書店・竺原のオススメ 『The Gambler』】
【Vol.139 蔦屋書店・神崎のオススメ 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』】
【Vol.138 蔦屋書店・江藤のオススメ 『死亡通知書 暗黒者』】
【Vol.137 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『二笑亭綺譚』】
【Vol.136 蔦屋書店・竺原のオススメ 『メイドの手帖』】
【Vol.135 蔦屋書店・河賀のオススメ   『ブードゥーラウンジ』】
【Vol.134 蔦屋書店・丑番のオススメ 『ブックオフ大学ぶらぶら学部』】
【Vol.133 蔦屋書店・江藤のオススメ 『ブックオフ大学ぶらぶら学部』】
【Vol.132 蔦屋書店・丑番のオススメ 『文豪春秋』】
【Vol.131 蔦屋書店・江藤のオススメ 『三体Ⅱ 黒暗森林 上・下』】
【Vol.130 蔦屋書店・江藤のオススメ 『ムー ビジュアル&アート集』】
【Vol.129 蔦屋書店・西林のオススメ 『キネマの神様』】
【Vol.128 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『ピダハン「言語本能」を超える文化と世界観』】
【Vol.127 蔦屋書店・丑番のオススメ 『治したくない ひがし町診療所の日々』】
【Vol.126 蔦屋書店・江藤のオススメ 『南島小説二題』】
【Vol.125 蔦屋書店・神崎のオススメ 『自由からの逃走』】
【Vol.124 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『ウイルスは生きている』】
【Vol.123 蔦屋書店・江藤のオススメ 『WATCHMEN ウオッチメン』】
【Vol.122 蔦屋書店・神崎のオススメ 『あとは切手を、一枚貼るだけ』】
【Vol.121 蔦屋書店・丑番のオススメ 『なぜならそれは言葉にできるから』】
【Vol.120 蔦屋書店・江藤のオススメ 『雪と心臓』】
【Vol.119 蔦屋書店・神崎のオススメ 『哲学の技法 世界の見方を変える思想の歴史』】
【Vol.118 蔦屋書店・江藤のオススメ 『ホテル・アルカディア』】
【Vol.117 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『私という病』】
【Vol.116 蔦屋書店・神崎のオススメ 『若きウェルテルの悩み』】
【Vol.115 蔦屋書店・江藤のオススメ 『薪を焚く』】
【Vol.114 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『パンダ探偵社 1』】
【Vol.113 蔦屋書店・神崎のオススメ 『自殺会議』】
【Vol.112 蔦屋書店・江藤のオススメ 『中央駅』】
【Vol.111 蔦屋書店・神崎のオススメ 『出家とその弟子』】
【Vol.110 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『まとまらない人 坂口恭平が語る坂口恭平』】
【Vol.109 蔦屋書店・江藤のオススメ 『雲を紡ぐ』】
【Vol.108 蔦屋書店・神崎のオススメ 『三つ編み』】
【Vol.107 蔦屋書店・江藤のオススメ 『スワン』】
【Vol.106 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『ダイエット幻想 やせること、愛されること』】
【Vol.105 蔦屋書店・丑番のオススメ 『聖なるズー』】
【Vol.104 蔦屋書店・神崎のオススメ 『ペンギンの島』】
【Vol.103 蔦屋書店・江藤のオススメ 『オリジン・ストーリー 138億年全史』】
【Vol.102 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『ひみつのしつもん』】
【Vol.101 蔦屋書店・丑番のオススメ 『プリンセスメゾン』】
 
【Vol.51〜Vol.100  2018年12月17日 - 2019年11月25日】
【Vol.1〜Vol.50 2018年1月15日 - 12月10日】
 

SHARE

一覧に戻る

STORE LIST

ストアリスト