広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.119
蔦屋書店・神崎のオススメ『哲学の技法 世界の見方を変える思想の歴史』ジュリアン・バジーニ 著 黒輪篤嗣 訳/河出書房新社
厚さ約3センチ、書名『哲学の技法』。
いま、顔を背けましたか。
大丈夫。難しそうな書名ですが、入門書なんですよ。
おや、今度はため息ですか。
何々、入門書は古代ギリシャのソクラテスやプラトンから始まって、延々と哲学の歴史の話だから、いつも途中で挫折していると。本書も副題に『世界の見方を変える思想の歴史』とありますが、哲学史を中心とした入門書とは少し違います。
著者のバジーニ氏は『100の思考実験』などで知られる哲学者です。哲学をもっとわかりやすく、身近にと考える彼が、私たちの「壮大な知の冒険への第一歩」として用意した〝世界の哲学の旅〟。それが本書です。
旅は第1部の「どのように知識を得るか」から始まり、「世界はどのようにあるか」、「私とは何か」、「いかに生きるか」と続き、「世界の旅を終えて」までの5部で構成されています。
まず第1部で問題とされるのは「哲学とは何か」「知る」とはどういうことかについてです。「技術」なのか「科学」なのか。「真理の探究」なのか「道の探究」なのか。国や地域、伝統によって考え方はさまざまです。第2部ではその多様な哲学が世界をどう捉えているかについて語られています。
第3部で視点は広い世界から「私」という存在に向かい、第4部では「生きる」ということについて、世界各地の哲学の考え方が示されています。
西洋哲学のみならず、東洋哲学やアジア、中東など世界の哲学を網羅し、古代から近代、現代の哲学者にまで言及する。バジーニ氏の知識の広さと深さに圧倒されながら読み進める旅は、多種多様な哲学を感じる旅です。
多種多様な哲学。そう、哲学書の多くは西洋哲学が中心です。でも世界には国や地域、伝統や文化によって発展したさまざまな哲学、さまざまな考え方があるということを、本書は教えてくれます。そして哲学に対する新しい視点を、西洋哲学から世界の哲学へ広がる視点を与えてくれるのです。
『哲学の技法』は、あなたの哲学に対する考え方を、少し変えてくれるかもしれません。
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