広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.131
蔦屋書店・江藤のオススメ『三体Ⅱ 黒暗森林 上・下』劉慈欣/早川書房
*注
『三体』および『三体Ⅱ 黒暗森林』のネタバレをしたくないので、全く内容に触れること無く書いています。未読の方も安心して先に進んでください。
「北の国から2002 遺言」を実はまだ見ていない。
北の国からシリーズはとにかく大好きで何度も何度も見ている。
特に「北の国から‘83冬」に始まるスペシャルドラマのシリーズがたまらなく好きで、いままで幾度となく見てきた。更に言うと、倉本聰の北の国からのシナリオ本も何度も読み返しているし、北の国からについて語り合うごく僅かな友人との会話の中で、いつもドラマモノマネをしていたので、セリフもほぼ頭に入っていて、脳内でいつでも再生できるので、すでに見る必要すらなくなっていると言ってもいい。
なのに、現時点での最終話となる2002遺言だけは見ていないのだ。
私は「最終回を見られない呪い」に囚われている。
自分のこういう特性は意識する前から実はあって、思い返してみると納得できる。
連続ドラマを見ていても最終回だけ見ていないままのことがよくあった。
「北の国から」と同じく大好きな「探偵濱マイク」のテレビドラマ版も、もちろんリアルタイムでも録画して見ていたのだが、最終話を見ていない。その後DVDも購入したので、いつでも見ることができるのだが、未だに見ていない。
それはなぜなのか。
改めて考えてみると、ある原因が考えられる。
1つには、あまりにも好き過ぎるドラマが終わってしまうのを受け入れられない自分がいるのではないか。
なんとも屈折した愛情ですが、同意してくれる方も多いのではないかと思う。
「北の国から」など、まさにそうですが、黒板家の物語が終わったという現実を受け入れたくないがために最終回を見ていないのだ。見ていない限り、私の中ではあの物語は続いている。脳内では小学生の可愛かった頃の純や蛍がキタキツネに今でも餌付けをしている姿が浮かんでくる。
終わりを見ない限り自分の中では終わらない。
これは1つの真実なのではないでしょうか。
もう1つ「最終回を見られない呪い」の原因として
「多くの3部作は2作目がもっとも優れている」という法則を信じていて、ゆえに、多くの最終回は見てもがっかりするだけなので、見ないほうがましだと思いこんでいるというのがあります。
これは私が勝手に思っていることなのですが、こちらも同意してくれる方は多いのではないでしょうか。
「インディージョーンズ」もそうでした、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」もやはりパート2が一番好きですし、私がもっとも素晴らしい映画だと思っている「ゴットファーザー」もパート2が最高でした。
「スター・ウォーズ」に至っては、何度3部作を繰り返しても、いつも真ん中の作品が最高じゃないですか。
考えてみると当たり前のことですが
1作目はどうしても世界観の説明や登場人物の説明にページを費やす必要があります。その説明で読者はこの世界観を知ることができるし、その世界で起こっている事を受け入れる事ができます。
ただ、どうしても説明的にならざるを得ないところがあり、ストーリーの面白さだけを追求することは難しい。
2作目はその世界観、登場人物などをすでに受け入れた読者を相手にしていることから、そのような説明はある程度省くことも出来ます。そして、その世界を縦横無尽に広げる事もでき、すぐには解決出来ない大きな出来事も配置することが出来ます。ストーリーをひたすらに大きく、そしてスピーディーに展開させていくことができる非常に作者としてものびのび遊べるところだと思います。ある意味、結末に向けて無責任と言ってもいい態度すら取ることができるためとにかく面白さを追求できる。
3作目は広がりまくった世界をまとめて、散りばめられた謎を回収して、そして何よりもここまでついてきてくれたファンが納得するようなラストシーンを描かなければなりません。そのプレッシャーとやることの多さから、面白さだけを追求することは叶わず、小さくまとまってしまいがちです。そして、ファンは「え?最後これ?がっかり、、、」みたいな。
これが私にかけられた「最終回を見られない呪い」の正体です。
つまり、あらゆるシリーズ物は真ん中が一番面白い、となると、最終回はそれよりも面白くない可能性が高いので、がっかりしたくないのと終わるのが嫌なので見たくない。
故に「北の国から2002 遺言」は私が生きている限り、決して見ることは無い。
というロジックが成り立つのです。
ここでやっと、今回取り上げる本『三体Ⅱ 黒暗森林』のお話を。
前作『三体』が発売されてから約1年、今か今かと待ちわびた続編です。
そして、この『三体』が3部作であるということはすでにわかっています。
つまり今回の作品が3部作の2作目なのです。
ここで、2作目の紹介をしてしまうと、どうやっても1作目のネタバレに繋がってしまう恐れがありますので、それだけは避けたいのですが、今回の2作目、想像を絶するおもしろさです。
まず、始まりからしてぶっ飛んでいますが、それが凄くおもしろく、そこからまた思ってもいないような展開になって、さらにまさかあんな感じになって、そこからの、とんでもないことが起こり、そしてそんな終わりにもっていくのか!うわーー!!!
なに言っているかわかりませんよね。
ネタバレしたくないのです。まっさらな状態で『三体』を楽しんでもらいたい。