広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.97
蔦屋書店・西林のオススメ『LEE』/集英社
私の『LEE』論
コーヒーを飲みながら、雑誌を眺めるのが私の至福の時間だ。
好みの記事や、コーディネートを見つけると胸がときめく。
コンパクト版も持ち運びしやすいからと人気だが、私は通常版がいい。
誌面から伝わる迫力が全く違うように思えるからだ。
年齢を経て、新たなステージを上がる度に用意されている雑誌の数々。9月に、宝島社から創刊された60代向けのファッション雑誌『素敵なあの人』
年齢は関係ない、いくつになってもおしゃれを楽しむのだ。そんな身も心も軽やかな先輩達の声が聞こえたようで、いつかあの雑誌を手に取れることを、密かに楽しみにしている。
そして私には気がつけば、15年以上購読している雑誌があった。その雑誌『LEE』は、集英社から発刊されている30代向け女性誌だ。
結婚したその月から読み始めた。家庭に入ったからには、地に足のついたような雑誌を選ばねばと何故だか思い、それまで読んでいた赤文字のついたような雑誌とは、そこでお別れした。
『LEE』はファッション誌という括りではあるが、決してそうではないと思う。ファッション、ライフスタイル、読み物のページが何ともちょうどいいバランスになっている。
巻頭特集に、北欧インテリアや旅の記事が組まれたりする。2015年8月には、料理家栗原はるみさんとコウケンテツさんのごはん会という、食の特集が巻頭を飾った。
毎年新年号では、女優の深津絵里さんが、旅の特集と表紙に登場されていて、あぁ…今年もこの号がやってきたと12月の忙しない時期に、透明感のある笑顔に、束の間の癒しをもらっていたのだが、2017年を最後に、違う女優さんに変わっている。また是非復活してもらいたいと願っている。
見た目だけではなく、その人の生活すべてを評価される時代、今でこそライフスタイル誌は、溢れるくらいに存在するが『LEE』はそのスタンスをずっと前から確立していた。
各社の付録競争が過熱する昨今、『LEE』は一歩引いた姿勢を取っているように感じる。びっくりするような豪華な付録はつかない。しかもたまにしかつかない。今月は気が向いたのでつけましたというような頻度だ。ベストレシピや収納、インテリア関係の別冊付録のほうが多く、これは以外と使えるので何冊もとってあったりする。最近よく登場するのは、収納アドバイザーのEmiさんだ。
書籍も多数発刊されており、今の『LEE』の一押しの方なのだと思われる。新年号の付録は花のカレンダー。こちらを楽しみに毎年購入されている方も多いだろう。
個人的に好きだったコーナーは、長谷川京子さんのおいしい歳時記という食がテーマのエッセイだ。きれいでクールな女優さんというイメージの長谷川さんだが、食に対しての貪欲さがびしびし伝わってくる文章で、随所でクスリと笑える。子育てや仕事に対する姿勢には共感し、ポルノグラフィティのご主人の影がちらっと見えるのもまた楽しい。リニューアルしたようで、食に関する話題が少なくなっているのが、残念なところだ。
mcsisterを高校生の時に愛読していたが、その時に活躍していた浜島直子さんや理衣さんがモデルで登場していたり、同世代のともさかりえさんが登場しているのも、『LEE』を好きな理由の一つかもしれない。
これまで『LEE』愛を綴ったが、もう購読をやめようかと思ったことが一度だけある。
2012年頃から、ハピファミという言葉が誌面を何度も飾った。
家族皆でハッピーという意味合いなのだろうか。幸せを前面に押し出してきた、家族スナップが巻頭を飾ったことがあった。似たようなファッションに身を包んだハピファミ達からは、作り物の、一種のうさん臭さのようなものを感じてならなかった。
『LEE』を購読している妹もどうしたんだろうね、最近の『LEE』は?と話題にしてきたので、おそらく多くの読者が困惑したのだろうと思っている。
この辺りを私は『LEE』の迷走期と勝手に呼んでいる。妹もしかり。
早々に軌道修正してくれてホッとした。そのおかげで今も購読しているのだから。
編集者が変わったり、カバーモデルが卒業したり、その変化を読者が好意的に受け入れることができればいいが、変化についていけず、離れてしまう場合も少なくないだろう。
キャリア向けだったのに、ママ向けの雑誌になってみたり、ライフスタイル寄りになってみたり、読者が戸惑う変化を、次号から強いるような雑誌も多い中、『LEE』の立ち位置は全くブレていない。丁寧で家族が笑顔になる暮らしをずっとテーマにしている。
私も、もうすでに30代ではないが、これからも『LEE』を購読し続ける。雑誌は山のように存在するが、読んでいて一番落ち着き、しっくりくる雑誌だから。
今は、PC やスマホでいくらでも雑誌を見ることができるが、紙のインクの匂いや、ページをめくる音、立ち読みをしている時の手に持った時の重み、好きな記事やコーディネートに出会った時の気持ちの高まりは、やはり紙の雑誌でないと味わえない。
傍らに、マグカップにたっぷりと注がれたコーヒー、時間を気にせず雑誌をめくる時に、
この上ない幸せを感じる。
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