広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.76

蔦屋書店・西倉のオススメ なにものにもこだわらない』森博嗣  / PHP研究所

 

 

「なにものにもこだわらない」は

森博嗣のここ20年の座右の銘なんだそう。

 

 

こだわることの最大の欠点は、思考が不自由になることであり、思考が不自由になると、思いつく機会が減るし、また問題解決ができにくくなる。こうなった人は、いつも周囲の誰かに頼ろうとするし、最近であれば、ネットで検索しようとする。自分の頭の中で問題を展開さえしない。考える事をしたくないから、こだわるのだ。

でも、こだわらないという事はいちいち考える。それが楽しい。

 

 

独特な持論だな〜と思いながら読み進めていき、そのうち妙に納得している。そして、

いざ拘らないように行動を起こしてみると「これってそれ自体にこだわってる?」と自問自答し、頭の中が少しパニックになる。

自然と拘りを持たない自分になれるともっと自由な発想ができるのかもしれない。

 

本書を読んで改めて「こだわり」を調べてみた。

こだわりとは、主に「信念」や「譲れないもの」を指して用いられるが、本来は「考え方が一つのことに縛られてしまっている」ことを意味する言葉、とあった。

 

今までこだわりを持つことは良いことだと思っていた。きっと、一般的にもそうだと思う。例えば「こだわりの食」や「こだわりの品」などとうたっているものに何故か惹かれる。

それはきっと、こだわりとは信念や譲れないものと認識していたから。もちろんそれも正解だけど。

森博嗣は何にでも「こだわる」という言葉が使われていることに違和感があるようだ。例えばイヤホンの宣伝で「音質にこだわった」とうたっているが、

 

 

それは単に小さな問題を解決した、高品質を追求したというだけのこと。

 

 

 

「こだわる」という言葉にこだわり過ぎていたことに気づく。

 

本書は「こだわり」というテーマの中に生や死、そして優しさなどについて語っている。その中で、

「自分にこだわらないと、寛容になる」という言葉がある。

 

 

自分にこだわりを持たなければ

「自分の気持ちになるな」を肝に銘じていれば、人に寛容になれる。

 

 

ーなるほど。

自分自身にこだわりを持たない、固執しないことで、寛容になれるのなら簡単なことではないけれど、是非そうしてみたい。

 

そして、

 

百パーセントこだわるようなこだわり方をしない

 

とも書いてある。

要は 臨機応変にということ。

 

 

ときどきこだわる。でもほとんどこだわらない。

 

それだけで思考が自由になるのだろう。

 

 

森博嗣の本を読むときはいつも、持ち帰る言葉があるんじゃないかとワクワクした気持ちになる。きっと胸にささる言葉があり、読後にはスッキリ晴れるような感覚を味わえるだろうと。

 

現在、森博嗣はミステリを書かれておらず、エッセイが多い。

「すべてがFになる」で魅了された私としては是非ともまた新作ミステリを読んでみたい。これは良くも悪くも、森博嗣作品へのこだわりなんだと思う。

 

 

 

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