広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.66

蔦屋書店・神崎のオススメ 『カミングアウト・レターズ  子どもと親、生徒と教師の往復書簡』RYOJI+砂川秀樹 編/ 太郎次郎社エディタス

 

 

LGBTという言葉をご存知でしょうか。耳にしたことはあるかもしれませんね。

LGBTはレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)の頭文字をとった言葉で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称として使われています。

ご紹介する『カミングアウト・レターズ』は、自分が同性愛者(ゲイ/レズビアン)であることを自覚した子どもが、そのことを親またはl教師に打ち明けた(カミングアウトした)ときを振り返る手紙と、それに対する返事が収められています。

同性愛者であることを隠して生活を続けることは可能です。しかしそれは彼らにとって偽りの自分、演技でしかないのです。カミングアウトは堂々と本当の自分として生きるための第一歩ですが、拒絶されるかもしれない、非難されるかもしれない恐怖との闘いであったことが書簡から伝わってきます。

一方、カミングアウトを聞いた親や教師は、その驚きと動揺を、「何があっても私の子ども」「お前が幸せなら」と、時間をかけてきちんと受け止め、受け入れようと努力します。苦しくてもカミングアウトができるのは、伝えようとする相手との良い関係がそこに築かれているからかもしれません。

LGBTに対する理解は、少しずつ広がってきているとは言え、欧米に比べると日本はまだ閉鎖的です。けれども世界は、男か女かではなく、一人の人間として、一つの個性として、多様性を受け入れる時代へと向かっています。

最後に、ゲイであることをカミングアウトした息子を、男性としてではなく、一人の素敵な人間として力づける母親の返信の一部を掲げます。

幸せになれるよね。同性だろうと異性だろうと、人間が対象であることは同じだ。結局は、相手は人間なんでしょ? だったら卑屈になんか決してなるな。確かに世間全体では甘くはないけど、全員が敵ってわけでもない。理解し、見守ってくれる人だって意外といるものだよ。自分に相応しい人間がいるといいね。

 

 

蔦屋書店・花村のオススメ 『カミングアウト・レターズ  子どもと親、生徒と教師の往復書簡』RYOJI+砂川秀樹 編/ 太郎次郎社エディタス

 

決意を伴う行動にはドラマがあります。

本人が覚悟し、決意し、行動する。

一度行ってしまえば後戻りはできない。

 

愛の告白、ご両親への挨拶、出産、就職、転職、マイホームの購入…etc

その後の人生を大きく左右する決断。

自分の行動が人生のターニングポイントになる瞬間。

 

状況が変わってしまうことへの恐怖。

それを乗り越えて行動するときそこに込められる熱量は必ず「ドラマ」を生み出します。

 

これは7人のセクシャルマイノリティ当事者が

「自分らしく生きる」

と決意し、大切な人たちへ自分の本当の姿を打ち明ける

「カミングアウト」を巡る物語。

 

 

 

かく言う私もセクシャルマイノリティの当事者です。

 

私がこの本を手に取ったきっかけは

「他のみんなは、どんなカミングアウトをしたのだろう」

という興味でした。

 

やっぱり、というべきか

「7者7様」「みんな違うんだな」という感想でした。

 

私の場合は、母親が夜御飯を作っている最中に、日常会話の延長線として

「カミングアウト」をしました。

 

緊張し過ぎて

「カミングアウト」する前に

「ブラックアウト」するかと思いました(笑)

 

反応はとてもあっさりしていて

「ふーん、そうだろうね。え、話は終わり?続きはないの?」

という感じでした。

 

「言わなくたって理解してくれていた」

という、とても嬉しいリアクションでした。

 

ちなみに父親は

「お前が幸せなら何でもOK!」

という人なので「わざわざする必要ないよね」という事を母親と話して終わりました(笑)

 

 

登場人物たちも

「告白する事で今までの関係が変化してしまう恐怖」

「自分が当事者の親になった動揺」

というものはあっても

「ありのままを表現し、それを受け入れてもらえた」

というハッピーエンドを迎えています。

 

 

私の場合や、登場人物たちは

「とても恵まれている環境」にいます。

 

カミングアウトはしても、しなくてもいいのです。

 

本書でも

「告白する自由もあれば、告白しない自由もあります。」という言葉で締めくくられています。

 

ですが、自分がカミングアウトできる状況であって、その上で

「行動したい」

「その勇気が欲しい」

という時は、ぜひ本書を手に取ってほしいです。

 

私の経験上、カミングアウトは人生を広げるきっかけになりました。

 

なにも隠さなくていいので、すごく楽です。

具体的にいうと、すごい友達が増えました(笑)

 

そして友達が、腹の底から本音で語り合える親友になりました。

 

そして本書は最終章に

「なぜ人は告白をするのか」

「人を愛する事に差など存在するのか」

「生得的性質が一般論と合わないという理由で、特別視する事は正しいのか」

という本質的な問いを投げかけてきます。

 

「行動する勇気が欲しい人へ」

「人間や社会の本質を多面的に考えたい人へ」

という二部構成で本書は出来ています。

 

人によってベストな答えは違うでしょう。

 

この本が、あなたにとっての答えを見つけるためのヒントになってくれればいいなぁ

そして背中をポンと押してくれる

「勇気のひとかけら」

になってくれればいいなぁと思います。

 

 

 

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