広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.228『はみだす緑』村田あやこ・藤田泰実/雷鳥社
蔦屋書店・竺原のオススメ『はみだす緑』村田あやこ・藤田泰実/雷鳥社
路上観察という言葉がある。
日常の中に当たり前の様に存在するがあまり見過ごされがちなもの、例えばちょっと変わった建物や地域によってデザインの異なるマンホール、何とも言えない趣のある看板などを観察(あるいは収集)する行為を表す言葉だ。
遡ると赤瀬川原平を中心に南伸坊、藤森照信などにより結成された「路上観察学会」なるものまである(これはそれこそ上述の3人が編集した書籍『路上観察学入門』(筑摩書房)の出版に合わせて1986年に結成されたものである)。
日常の中に当たり前の様に存在するがあまり見過ごされがちなもの、例えばちょっと変わった建物や地域によってデザインの異なるマンホール、何とも言えない趣のある看板などを観察(あるいは収集)する行為を表す言葉だ。
遡ると赤瀬川原平を中心に南伸坊、藤森照信などにより結成された「路上観察学会」なるものまである(これはそれこそ上述の3人が編集した書籍『路上観察学入門』(筑摩書房)の出版に合わせて1986年に結成されたものである)。
本作はそんな路上観察の系譜を感じさせる1冊で、取り上げられているのはタイトルにもある通り「緑=植物」についてである。
つまり「はみだす緑」とは、家の敷地や、歩道のアスファルトのひび割れ、よく道の端の方で目にする排水路のカバー(グレーチング蓋と言うらしい)といった、我々の暮らしに密接したあれやこれやからはみ出すばかりに存在する植物を独自の感性で観察した、視点の妙を楽しむ書籍である。
つまり「はみだす緑」とは、家の敷地や、歩道のアスファルトのひび割れ、よく道の端の方で目にする排水路のカバー(グレーチング蓋と言うらしい)といった、我々の暮らしに密接したあれやこれやからはみ出すばかりに存在する植物を独自の感性で観察した、視点の妙を楽しむ書籍である。
著者の村田あやこさんは路上園芸鑑賞家を称するライターで、会員が一人の路上園芸学会のメンバーでもあり、本作はそんな彼女の10年以上にも渡る活動の記録がしたためられている。
そして本作は、単なる記録という訳ではなく“筆者扮する主人公「たむら」が住む架空の街を舞台に、ご近所のクセの強い園芸家たちのこだわりが詰まった(中略)路上園芸を鑑賞”するという形式で構成されており、藤田泰実さんのイラストも相まって非常に愛らしい事になっている(紹介されている路上園芸やエピソードは全て村田さんの実体験をベースにしている)。
また実際に撮り溜められた写真も掲載されているので、それを見て「うちの近所にもこんな所ある!」だったり「どうなってるの、これ。」といった様々な感慨も楽しめる事だろう。
そして本作は、単なる記録という訳ではなく“筆者扮する主人公「たむら」が住む架空の街を舞台に、ご近所のクセの強い園芸家たちのこだわりが詰まった(中略)路上園芸を鑑賞”するという形式で構成されており、藤田泰実さんのイラストも相まって非常に愛らしい事になっている(紹介されている路上園芸やエピソードは全て村田さんの実体験をベースにしている)。
また実際に撮り溜められた写真も掲載されているので、それを見て「うちの近所にもこんな所ある!」だったり「どうなってるの、これ。」といった様々な感慨も楽しめる事だろう。
それにしても、ある意味こんなありふれた日々の光景が、切り取り方一つで、感じ方一つで、現し方一つでこんなにも興味深く面白くなるのか、と思う。
当たり前にする事、当たり前にあるもの。
そうした事象にはとかく慣れが生じて“何も考えずにする”“そこにあるけれど何も感じない”となってしまいがちだが、そうではなく、違う角度から捉えてみる事によって起こる“何か”も、確かにあるのだろう。
そうした事象にはとかく慣れが生じて“何も考えずにする”“そこにあるけれど何も感じない”となってしまいがちだが、そうではなく、違う角度から捉えてみる事によって起こる“何か”も、確かにあるのだろう。
“小さな事に面白みを感じられる事は、人生を楽しく豊かにする”なんて事を思わせてくれた。
その意味で、本作は皆さんにこれまでになかった喜びを与えてくれるに違いない。
その意味で、本作は皆さんにこれまでになかった喜びを与えてくれるに違いない。
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