広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.206『東京ルポルタージュ 疫病とオリンピックの街で』石戸諭/毎日新聞出版
蔦屋書店・江藤のオススメ 『東京ルポルタージュ 疫病とオリンピックの街で』石戸諭/毎日新聞出版
気がついてみると2021年がもうすぐ終わる。
みなさま覚えていらっしゃるでしょうか。
東京オリンピックが開催されたのは今年だったことを。
東京オリンピックが開催されたのは今年だったことを。
始まるまでは、やるのかやらないのか、どんな形で行われるのか、観客はどうする、海外からの渡航客はどうする、開会式の演出は誰がやる、などなどよくわからないことが多く、本当にやるのか?ってギリギリまで思っていたのだが、いざ始まってみると、なんだかんだ言いながらもあっという間に終わってしまって、結局あれはなんだったのか、個別に検証することも反省もなく、誰も話題にしなくなった。
今思えば、あれは本当に今年あった出来事だったのか。
すべてはもやもやとした霧の中で行われたことみたいだ。
すべてはもやもやとした霧の中で行われたことみたいだ。
コロナの話題も尽きることはないが、このコロナ狂想曲、一体なんなのか。
一体これはどんな現象でどんな結末を迎えるのか。
当事者であるがよくわからない。
一体これはどんな現象でどんな結末を迎えるのか。
当事者であるがよくわからない。
この一年の出来事がぼんやりしていて
一体今年がどんな年だったのかと問われても答えられない気がする。
これにはきっとなにか理由があるはずだ。
そうでなかったら、私がどうかしてしまっているのかもしれない。
一体今年がどんな年だったのかと問われても答えられない気がする。
これにはきっとなにか理由があるはずだ。
そうでなかったら、私がどうかしてしまっているのかもしれない。
その理由のひとつと言えるだろうか、マスメディアが発する言葉の全てが、コピーライターが作ったキャッチフレーズのようで、意味がわからないわけではないのだが、全部上滑りしていく。「東京アラート」「夜の街」「安心安全の東京オリンピック」全てが空虚で実体が無い。
こんな言葉で2021年が語られて良いはずがない。
こんな言葉で2021年が語られて良いはずがない。
マスメディアが語る大文字の言葉は、生身の人間が発した言葉とはとてもじゃないが思えなくて。もっと私たちがわかる言葉で、もっと本当の話を、もっと地に足がついた人たちの語りを聞かなくては、2021年が失われてしまうのではないか。焦りにも似た気持ちで心が落ち着かない。そんな私の目の前に現れたこの本、手に取る以外の選択肢は無かった。
この『東京ルポルタージュ 疫病とオリンピックの街で』では、元毎日新聞の記者であり、今の時代を現象として見事に切り取る手腕に定評のある石戸諭が、2020年4月から2021年10月まで、街を歩き、聞き、話し、手触りを感じながら集めた31の物語が収録されている。
マスメディアに登場する政治家や識者、専門家の言葉は、先程も述べたように空虚でスカスカで中身がなかったり意味がわからなかったりごまかしていたりするのだが、この本に登場する人々の言葉にはしっかりとした質量がある。手にずっしりとくる重さがある。
話題はさまざまに飛ぶ「新宿二丁目のバー」「自粛警察」「オリンピック」「緊急自体宣言下の生活」「沖縄」「歌舞伎町」すべて著者が東京を歩き聞いて集めた話だ。
これだ。この言葉であり話だったんだ。
2021年を振り返って何も手に残っていなかった私もこの本を読むことで、ほんの少しでも今年を取り戻せた気がした。
2021年を振り返って何も手に残っていなかった私もこの本を読むことで、ほんの少しでも今年を取り戻せた気がした。
この本で切り取るのは東京であるが、同じように地方にもたくさんの本当のことがある。
小さな声を丹念に拾い集めることこそが一番大事なことなのだ。
小さな声を丹念に拾い集めることこそが一番大事なことなのだ。
マスメディアが語る大文字の言葉でわかった気になるのは大変危ない。
むしろそれでは何もわからなかったという方が正しい態度だったのだと思う。
むしろそれでは何もわからなかったという方が正しい態度だったのだと思う。
このような小さな声、街の片隅で囁かれる声でしか本当のことは語られない。
そして幸せなことにわたしたちは本を読むことで、それらの声を聞くことが出来る。
そして幸せなことにわたしたちは本を読むことで、それらの声を聞くことが出来る。
私がそうであったように、あなたも見つけて欲しい。
マスメディアの発する目に刺さるような強烈な光で覆い隠してしまっていた
ほのかに揺らぐホタルの光のような小さな希望を。
マスメディアの発する目に刺さるような強烈な光で覆い隠してしまっていた
ほのかに揺らぐホタルの光のような小さな希望を。
そして2021年をその手に取り戻すのだ。
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