【広島 蔦屋書店】願い続けるちひろの絵
幼い頃、家にちひろの絵があった。
たしか、赤い表紙の画集も見たことがある。
わたしはその絵が好きだった。
何ともいえない温もりのようなものを感じ、そっと見守られているような気がしていた。
この夏、東京のいわさきちひろ美術館へ行った。
わたしは知らなかったのだが、今年はちひろ生誕100年の年だった。
そしてその日はファッションブランド spoken words projectの「着るをたのしむ」イベントが行われていた。
デザイナーの飛田さんは以前から、ちひろの絵を研究していて、今回生誕100年のコラボレート作家のひとりである。
彼はちひろをお洒落で「いい女」だと話した。
たしかに展示されていたちひろの小柄なスーツは、今見てもとても格好よく、小さな黒いヒールの靴もきれいな状態で、きっとお気に入りのものを大事に使うお洒落さんだとわたしも思った。当時、そのスーツを着てソビエトへ行き、憧れのアンデルセンの住んでいたヨーロッパへ渡ったちひろは、ずいぶん活動的だった。
ヨーロッパでの多くのスケッチは、絵に対するちひろの前向きでひたむきな思いが詰まっている。
戦争を経験し、母親となった画家いわさきちひろの願いは
「世界中のこどもみんなに 平和と しあわせを」
戦争に対するちひろの憤りはとても強かったようだ。
数ある絵本の中で『わたしがちいさかったときに』は、広島で取材して、被爆したこどもたちの詩や作文に絵をつけたものである。
描きあげたあと、「戦争の悲惨さというのは子どもたちの手記を読めば十分すぎるほどわかります。私の役割は、どんなに可愛い子どもたちがその場におかれていたかを伝えることです。」 とちひろは語っている。
描かれたこどものたたずまいや目は、言葉にならずとも訴えてくるものを感じる。
そのやさしい絵本を見たこどもが大きくなってもわすれずに心のどこかにとどめておいてくれて、何か人生のかなしいときや、絶望的になったときにその絵本のやさしい世界をちょっとでも思いだして心をなごませてくれたらと思う。それが私のいろんな方々へのお礼であり、生きがいだと思っている。
いわさきちひろ 1972年 最晩年の手帳より
そうか、だからなのか。
昔、こどもながらに見守られていると安心したように、ちひろの絵は今もわたしを癒してくれる。目にすると和やかな気持ちになる。
今、伝える術のない画家の作品だからこそ、思いを想像し共感する。
いわさきちひろ、生誕100年。
このフェアではちひろ美術館・東京のご協力で商品を販売しています。
また書籍は大人向けの絵本や画集、生誕100年のムック本なども取り揃えております。
絵や文字からちひろの想いを感じていただければと思います。
(広島 蔦屋書店 島津)
【協力・お取扱いブランド】
ちひろ美術館・東京
東京都練馬区下石神井4-7-2
03-3995-0612
開館時間 10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日(祝休日は開館、翌平日休館)
入館料 大人800円/高校生以下無料
spoken words project(スポークン ワーズ プロジェクト)
デザイナーの飛田正浩主宰のファッションブランド。多摩美術大学染織デザイン科在学中からさまざまな表現活動を「spoken words project」名義で行う。卒業を機にファッションブランドとして改め、1998年東京コレクションに初参加。手作業を活かした染めやプリントを施した服づくりに定評がある。現在〈PUMA〉など他のブランドとのコラボレーションや新ブランドの立ち上げ、芸術祭への参加などその表情領域は多岐にわたり、アパレルブランドの枠を超えて活動している。
- 期間 8月18日(土) - 9月30日(日)
- 場所 2号館1F 広島 蔦屋書店