広島 蔦屋書店が選ぶ本 Vol.2

【蔦屋書店・江藤のオススメ 『勉強の哲学』】
 
2017年広島蔦屋書店で異常に売れた本があります。
それが、現在店頭の年間ランキングでビジネス書1位のところに置いてある「勉強の哲学」という本です。
どこのお店でも売れたベストセラーという本ではありませんが、本当に素晴らしい本なので、今回はこの本を紹介してみようと思います。
 
さて、勉強って聞くと学生の読む本かなってちょっと思ってしまいますよね、もちろん若い方にこそこの本は読んでもらいたい。特に高校生や大学生には。しかし、この本は社会人やすでに仕事をリタイヤした人生の先輩達にも読んでもらいたいのです。
勉強って、数学や国語だけではありません。なにがどうなって今のこの世の中があるのか、人がよりよく生きていくにはどうしたらいいのか。または、先日テレビで放映された大ヒット映画「君の名は」。あれは凄く良かったので自分は感動したけど、反面、新海監督は一般大衆にひよったんじゃないか、売れ線をねらうなんてあざといという批判もある。これはどういった現象なんだ。
知らないことやわからないことを知り理解する為に勉強がある。そういうことが書いてあるんです。
勉強とはどういうことか、勉強をすると人はどうなるのか、勉強という行為についての本質的な解と、具体的な勉強の為の実践がこの本には書いてあります。

先ほどあげた新海監督の例は本書の中でも取り上げられるので気になる方はそこだけでも拾い読みしてもらえればこの本の面白さが伝わるのではないでしょうか。
著者の千葉雅也さんはフランス現代思想を下敷きにして論じていきます。とても難解な思想や言葉をまったくそうとは感じさせない比喩や言い換えを使って、じっくり読み込めばだれにでもわかる言葉でわかりやすく教えてくれます。哲学の知識がなくてもまったく心配いりません。ボケとかツッコミという言葉がわかれば問題なく読み進めることができます。
 
勉強をする事で今までの自分は失われる、そして新しい自分になるのです。それは革命です。革命、変化を恐れる人は無理して勉強をすることはないのですが、新しい自分、新しい環境、変化や革命を必要としている人や興味がある人はこの本を読むことをおすすめします。
最後にもう一つ、この本には書物の読み方についても書かれています。
勉強の為に避けられないのは読書です。何かを知ろうとした場合、やはり専門家によって書かれた紙の本を読むことは必須です。ここで著者は少しホッとするようなことを言ってくれます。
本はすべて通読する必要は無いのだと。
 
そもそもある本を完全に読み解くことは不可能なのです。難しい本を自分が納得する形で読もうとするのが間違いです。難しい本は「テクスト内の構造=設定の概念の機能を捉える」という読み方が必要です。ここのテクニックについては本書をじっくり読んでもらいたいと思います。目から鱗かもしれませんよ。
 
先ほども出ましたが、通読する必要はないのですが、多読ということが大事だとも語られます。多読することでたくさんの書物を知ることは大事で、この書物AはBの影響を受けて書かれた、とか書物CはDと対立している、などを知っていることでその分野を広く見渡せるようになります。
勉強をする、もっと限定的に言うと本を読むということで、確実にあなたの世界は広がります。
このコーナーのサブタイトル「本が広げる世界」にやっとここでたどり着きました。本は確実にあなたの世界を広げます、いや、変えると言ってもいい。それは一つの革命なのです。「勉強をする=本を読む」ことは暴力を使う、血を流す、ことよりももっと本質的な革命そのものです。
現代は勉強をするには、もっとも良い環境にあると言えます。ネットを使えばわからない言葉を調べることもできますし、私たちの周りにはまだ、多くの書店や書物があります。手遅れになる前に今こそ革命を!
 
こんなに文字の多いページをせっかく読んでくださっている皆様に、話が大きくなりすぎて引かれてしまったのではないかと心配です。いや、ここまで読んでくれたあなたには、決して大げさではないと解ってくれるのではないかという希望を抱いて私の無駄話はこのへんにしておきますね。
本当にこの本には勉強を捉える為の本質的な一つの答えが書かれていますので、読むときっと目の前にある壁がひとつでも壊せると思います。
そして新しい自分に会いにいきましょう。
 
 
 
 

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