へいじつのよみきかせ〜親と子の時間〜 絵本『なんにもできなかったとり』
Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。今回は、絵本『なんにもできなかったとり』をテーマにおおくりします。
私はこの絵本をSNSでも何度かおすすめ絵本として紹介していますが、4月というスタートの季節に必要以上に張り頑張りすぎて心がしんどくならないように、ぜひこの絵本を読んでいただきたいと思っています。
私がこの絵本に出会ったのは、書店で働き始めて間もないころでした。著者は刀根里衣さんという方で、絵本の表紙を見て、一目でその絵に惹きつけられたことを今でもよく覚えています。前職では保育士をしていたので、何もかもが新鮮でしたがプレッシャーも大きくのしかかっていました。レジ間違えない?尋ねられた絵本を探しだせるのか?というところからまったくの0からのスタート。さらにコンシェルジュという自分の立ち位置が何なのかもわからないまま時間は過ぎていくばかりで、もどかしい気持ちがだんだん大きくなっていきました。自分にはぜんぜん自信がなかったんです。
主人公のとりは、できないことがあると「みんなはできるのに、自分にはできない」と、いつも誰かと比べて落ち込みます。でもとても努力家で、なんとかみんなに追いつこうと工夫してチャレンジ精神旺盛に頑張ります。だけどそれでもやっぱり失敗ばかりの自分は途方に暮れてしまうのです。
そんなある日、草原に咲く花たちに出会います。花たちの困りごとに身を挺して協力するとりの姿は、もう今までの自信のない自分ではありません。形は変わってしまったけれど、その美しい姿は、周りの人たちを幸せにできる場所として生まれ変わります。とりの心の中の優しい思いやりが生んだ場所です。
そんなある日、草原に咲く花たちに出会います。花たちの困りごとに身を挺して協力するとりの姿は、もう今までの自信のない自分ではありません。形は変わってしまったけれど、その美しい姿は、周りの人たちを幸せにできる場所として生まれ変わります。とりの心の中の優しい思いやりが生んだ場所です。
私はこの絵本に励ましてもらい、「これまで頑張ってきた今の自分でいいんだ」ということと「私にもできることがあるはず」という気持ちを持つことができました。そして、刀根里衣さんの美しい挿絵は私をとても前向きにしてくれました。
新しい場所で、頑張ろうとスタートを切る準備をしている人はたくさんいると思います。もうスタートをきって、がむしゃらに頑張っている人もいるでしょう。少しペースダウンしても、今までの自分を振り返ってみれば、今までもちゃんと頑張っていたでしょう?この主人公のとりのように優しさや思いやりや努力が土台となって「自分」が形成されているのなら、必要以上に頑張らなくてもいいんじゃないでしょうか。きっとうまくいく瞬間に出会えるはずです。
なんにもできない人なんていないんです。
「なんにもできなかった」は過去形なので、なんにもできなかったけどできるようになった!という素敵な言葉だと私は思っています。
この絵本をとおして、自分の中にあるそのままの温もりと強い信念は、誰かの役に立つことの幸せを教えてくれましたし、自信を取り戻す方法は、いくつでも試せることを知りました。
今のままの自分を大切にしながらゆっくりステップアップしましょう!
この絵本をとおして、自分の中にあるそのままの温もりと強い信念は、誰かの役に立つことの幸せを教えてくれましたし、自信を取り戻す方法は、いくつでも試せることを知りました。
今のままの自分を大切にしながらゆっくりステップアップしましょう!
【今月のおすすめ絵本】
『なんにもできなかったとり』刀根里衣/NHK出版
[読み方アドバイス]
声に出して、自分自身にゆっくりと読んであげましょう。
【プロフィール】
宮本陽子(みやもとようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日1回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日1回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。