【広島 蔦屋書店】「発酵文化人類学」 発酵を通して人類の謎を紐解く
「発酵」と聞いて思いつくものは何でしょう。昨今テレビや雑誌でも取り上げられることも多いですね。味噌、醤油、納豆、お酒、パン、ヨーグルト等わたしたちの身近にあるもので、毎日何かしらの発酵食品を食べているといっても過言ではありません。健康食品としても広く知れわたり、なくてはならない食品ともいえます。
そもそも発酵とは何か、なぜ健康にいいのか。また、その歴史と文化を掘り下げることによって見えてくる人類の謎と可能性。それを併せて学べるのが発酵デザイナーの小倉ヒラクさん著『発酵文化人類学』。2017年発行後もロングヒットを続ける永久保存版の発酵テキストです。
発酵菌の見えない働きをデザインを通して見えるようにする、目に見えない微生物の働きを直感的に伝えたいと活動するヒラクさんの書籍やイベントは単に発酵について学ぶことに収まりません。科学的な現象として定義できる発酵自体は普遍的なものですが、発酵食品を味わうわたしたちの感性に普遍性はない。「おいしい!」と思うひとそれぞれの感性には歴史が紐付いていて、その感性を通じて他者とコミュニケーションすることができる。そういった人と人とのつながりが文化をうむ。発酵文化人類学、う~ん奥が深い。
日本最古の発酵食品だと言われている食品は醤(ひしお)だそうです。醤とは醤油のような調味料で、縄文時代末期に利用が始まっていたとされています。奈良時代ころからは漬物が親しまれています。そんな歴史の長い日本各地の発酵食品をもとめて47都道府県を巡り、日本の発酵文化を伝えるのが『日本発酵紀行』です。ヒラクさんが全国で出会った知られざる発酵食品とその現場からローカル発酵文化のすさまじさ、面白さ、多様性を感じます。ローカル発酵文化は人々の暮らしの貴重なアーカイブで、日本人がどう生きてきたかの記録。それを浮き彫りにしていくことは日本の再発見であり、わたしたちがどう生きていくかという未来でもあるのです。
北から南、西から東。日本の土地の隅々に、人の営みと自然の恵みが結び合わされた多様な文化が息づいている。『発酵文化人類学』の舞台になるのは、ヒトと自然がおりなす暮らしの芸術の世界。そしてその舞台の主役は、他ならぬアナタだ。アナタが手前みそを仕込むたび、また家族や友人と食卓を囲むたび何千年も受け継がれてきたバトンが次の世代にパスされる。
美しい酒を醸すように、美しい社会を醸していこうぜ。
『発酵文化人類学』 part7 よみがえるヤマタノオロチ~発酵の未来は、ヒトの未来~より引用
- 期間 2月4日(火) - 4月5日(日)
- 場所 1号館1F