【広島 蔦屋書店】エドワード・ゴーリー 優雅で残酷、どこか滑稽
2号館1F アートコーナー平台 2021年12月11日(土) - 02月14日(月)
エドワード・ゴーリーの新刊、『鉄分強壮薬』刊行を記念し、フェアを開催いたします。
あっけないほどの残酷さ、クラシカルな優雅さと、そこかしこに滲む滑稽さ。
そんな不条理な世界へ、あなたをお誘いします。
今回のフェアに寄せて、訳者の柴田元幸さんから熱い直筆コメントをいただきました。
こちらのコメントは、フェアにてご覧いただけます。
柴田元幸さんのサイン入りゴーリー絵本や、ゴーリーグッズもご用意。数量限定となっておりますので、お早めにお求めください。
そして、今回のフェアでは、柴田元幸さんが語るエドワード・ゴーリーの魅力を冊子にし、店頭でお配りしております。
新刊『鉄分強壮薬』と『狂瀾怒濤』『金箔のコウモリ』の3冊へのコメントは、広島 蔦屋書店のフェア開催に合わせての書き下ろしです。
ぜひ、お持ち帰りくださいませ。
広島 蔦屋書店 犬丸
エドワード・ゴーリーの魅力
― 柴田元幸 ―
たとえばニコニコ笑った子供たちでいっぱいの絵本を読んで人は自分もニコニコ笑いたくなるかというと、人間そういうふうに素直にできているとは限らなくて、ニコニコしている子供たちの絵を見て、むしろムカムカしてくる人間もいるかもしれないのである(幸いそういう人間が迫害されないだけの自由はまだこの国にも残っている)。そういう人間からすれば、間違っても子供がニコニコ笑っていたりしないエドワード・ゴーリーの絵本は、絵本世界における非常に悦ばしい例外なのである。
しかもそういうニコニコしない子供たちの住む世界を、ゴーリーは異様なまでの職人芸を注ぎ込んで描く。子供たちは平気で次々殺すくせに、背景の壁紙とか絨毯とかには、異様なまでの愛情を込めている。この見当外れの愛情配分もまた悦ばしい(もっとも、次々殺すことも実は倒錯した、あるいは案外素直な、愛情表現の一形態かもしれなくて、その場合ゴーリーの愛情配分はわりと凡庸だということになるのだが、そういう深層心理学にはひとまず立ち入らない)。
しかもしかも、子供はそうやって虐待がデフォルトでありながら、猫は決して痛い目に遭わせず、バスター・キートンが笑わないことがあの史上最も偉大な喜劇俳優のトレードマークであるのと同じように、のほほんと平和そうな猫こそはゴーリーのトレードマークとなっている。キートンの場合は、ごく若いころに出演した映画で、一瞬だけニヤァと笑ったシーンが残っているのだが、ゴーリーに関しては、若いころに描いた、猫が落ちてきた煉瓦に脳天を割られた絵なども残っていない。キートン以上に徹底しているのである。
【プロフィール】
エドワード・ゴーリー Edward Gorey
1925年、シカゴ生まれ。 独特の韻を踏んだ文章と、独特のモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表している。またエドワード・リアやサミュエル・ベケットらの作品の挿絵、劇場の舞台美術なども手がけた。幻想的な作風と、アナグラムを用いた(Ogdred Weary など)ペン・ネームを使い分けて、たくさんの私家版を出版したために、多くの熱狂的コレクターを生みだした。 1943年から46年まで、陸軍の軍務に服したあと、ハーヴァード大学でフランス文学を専攻する。 1953年ニューヨークの老舗出版社Doubledayに就職。ブックデザインを担当する。この年、最初の単行本The Unstrung Harpが出版される。 2000年4月15日、心臓発作のため死去。享年75歳。 2016年4月2日から大回顧展である「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」が初めて日本全国を巡回、大きな話題となった。
柴田元幸 Shibata Motoyuki
1954年、東京生まれ。アメリカ文学研究者。 2005年、『アメリカン・ナルシス』(東京大学出版会)でサントリー学芸賞受賞。ほかの著書に『生半可な學者』(講談社エッセイ賞受賞)、『翻訳夜話』(文春新書、村上春樹氏と共書)などがある。2010年、ピンチョン『メイスン&ディクスン』(上・下、新潮社)で日本翻訳文化賞受賞。
主催:(株)みにさん・田中優子事務所
Twitter @minisanoyt
協力:(株)河出書房新社
- 期間 2021年12月11日(土) - 2022年2月14日(月)
- 場所 2号館1F アートコーナー平台