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【インタビュー】上本健治の太鼓判「Lightwoodチェア」

 
マルニ木工の上本店長。お洒落で温和なお人柄でT-SITEのスタッフの中にもファンが多い。長く使えるいいもの。そこに込められたマルニ木工のものづくりの哲学。そして、ものを通じて受け継がれる想いとは?上本さんの誠実さが伝わるインタビューになった。

 
 
お気に入りの一脚の椅子が変える暮らし
 
2017年の広島T-SITEのOPENから店長をしています。西日本の営業部長も兼務しています。一人ひとりのお客様のお気持ちに寄り添い、家具選びを楽しんでもらっています。マルニ木工の椅子は1回買えば10年20年と長く使うというのが前提になります。飽きたらすぐに買い換えるモノじゃないですから。共に年を重ねていってエイジングしていく楽しさがあるというのはお客様に伝えますね。人とモノとの関係性から、10年後とか20年後の未来が見えてくるとか、未来を想ってモノを使う楽しさがあるとか、そこはしっかり伝えて、暮らしに寄り添う一脚を選んではどうですかとお話しますね。そうすると見方も変わるし、お値段とか木材とか色味を気にするのはもちろんですけど、それ以上に自分が気に入るかが一番大事になってきます。それをしっかりお伝えして、お買い物を楽しんでもらうというのを大事にしています。

 
 

お気に入りの椅子だったり、家具があると、丁寧に暮らすようになると思います。座り心地が良い椅子とか、デザインが良い椅子だと、その周りも綺麗にしたくなりますし、帰って家で過ごす時間がやっぱり楽しみにもなります。自分の人生が整っていくというか、そういう感覚を持てるのがいいですよね。自分の好きな椅子に座って、音楽が好きな人が音楽を聞いたり、本が好きな人が本を読んだりするのは、充実した時間になると思います。僕自身もお気に入りの家具があると、食器類とかも自分の好きなものを揃えようとするので、暮らしがいい感じになっていきます。次に、照明はどうしようなどと考えるのも楽しいです。

 
長く愛着を持って使えるもの
 
入社のきっかけですか?話すとすこし長いんですけど。大学生のときにカフェバーでアルバイトをしていたんです。そのオーナーが新しいお店を作ることになって、インテリアを選ぶのに家具のカタログがたくさん届いて、スタッフみんなで見ているときの1冊がマルニのカタログだったんです。無限大のロゴマークがすごい印象に残っていました。
 
 
 
 
 
 
それで就職活動しているときに、アルバイトしていたような飲食業界は違うと感じて。資料請求している中にあの無限大のロゴマークがあったんです。それが、インテリアもいいかもと思ったのがきっかけですね。あのときは大阪の日本橋にショールームがあったので、商品を見せてください、っておしかけましたね。そのときに大阪の売場で一番良いのはどこですかって聞いて。梅田の百貨店だと教えてもらったので見てみたら、ガラス張りの本当に素晴らしい売場で。マルニ木工で働こうと思いました。

 
 
 
 
実はインテリアにもともと興味がなかったんですが、自分の使っている道具には愛着を持つタイプだったんです。当時はタバコを吸っていたので、ライターと灰皿は手入れして、大切に使っていましたね。タバコはやめましたけど、ライターはまだ大事に持っていますね。長く大事に愛着を持って使ってもらえるモノに自分は興味があって、この会社を選んだところもあると思います。


いまでも思い出す得意先からの言葉
 
ネクストマルニプロジェクトのときは自分にとっても転機でした。2005年くらいですかね。現社長の山中洋が新規事業開発部という部署の部長で、僕は東京の百貨店を担当する部署の所長をしていました。ネクストマルニというのは、日本の美意識を椅子に込めてミラノで発表しようというプロジェクトで、世界で活躍されている12人の建築家やデザイナーに椅子を競作してもらいました。
 
それまでのマルニのクラシックのラインからすると、テイストはかなり異なります。だから、これまでの営業先だけでなく、新規営業もかなりしました。営業の反応はかなりよかったです。これまでのお得意先様も本当に応援してくれました。都内の百貨店では、イベントスペースを全部ネクストマルニで使っていいって言われて。地下のウィンドウにもネクストマルニのミニチュアのチェアを並べて。できるだけのことは全部やったんですけど、売上は正直厳しかったんです。そのときずっと家具畑でやってこられたリーダーの女性の方に、売れないって最初からわかってたって言われたんですね。でも、こんな取組をしている日本の家具メーカーはないから、応援したかったって、使命感だったみたいに言ってくれました。この体験があったからお得意先様を本当の意味で大切にしないといけないし、世の中にも貢献できることをしないといけないと思いました。
 
ネクストマルニは、発売したときは、すごく評判があって、いろんな雑誌に取り上げられたんですけど、結局、話題性じゃ家具が売れないと言ったらおかしいですけど、やっぱり座り心地だったりとか、どういうシーンで使って欲しいのかとか、そういうお客様の目線だったり、使用シーンが描けないモノを作っても売れないんだなというのが本当に学習できました。
 
マルニコレクションのアートディレクターである深澤直人さんは、技術とか工場を見に来て、うちの会社で何ができるかを見た上でデザインしてくれています。深澤さんの言葉で、「切削の力であったり、それを仕上げていく職人達の手の加工精度だったり、木の魂が持っている魅力を引き出せる技術力は、必然的にマルニを表現している。マルニから生み出される製品は、その魅力を持っていなければならない。」と言われていました。生産に関わる人から営業まで同じ目線を持っているのがマルニの強みだと思います。それが、HIROSHIMAアームチェア(※)の成功につながったんだと思います。
 
 
 
(※)2008年に発売された深澤直人デザインのアームチェアのシリーズ。アップル本社でも数千脚が使われている。
 
 
 
チェアで受け継がれる想い。娘さんへのプレゼント。
 
僕が太鼓判を押すのはマルニ木工のLightwoodチェアです。デザインはジャスパー・モリソンさんですね。ソフトさとシャープさが調和したシンプルなデザインでありながら、温もりのある印象を与えてくれます。名前が示す通り、非常に軽量で使い易く、視覚的にも軽快な印象を与えてくれます。やさしいフォルムの背板は、座る人の背中を程よく支えてくれ、座り心地もとても良いです。
 
 
 
僕はこのチェアを娘にプレゼントしようと思っていて、今は僕が単身赴任先の自宅で使っています。
僕自身も若い頃は先輩や親がやっていることを見よう見まねでやってきて、年を重ねて気づけたことがいっぱいあるんです。娘にも同じように、僕の想いを今じゃなくていいんです。将来気づいてもらえたら嬉しいなと思うんです。やがて娘にも子供が生まれたりとか、大切な人ができると、いつかわかってくれるポイントがあると思うんですね。僕が選んだモノへの想いもきっと理解してくれたり、そういうふうに椅子を通じて想いがつながっていけばいいなと思っています。
 
このLightwoodチェアに、座面がペーパーコードの新仕様が、今年のミラノサローネでお披露目となります。120メートル近くあるペーパーコードは職人が3時間ほどかけてしっかり編み込んでいきます。揺るぎないクラフトマンシップを持った木工技術により、高いデザイン性と強度を兼ね備えています。
人の手でつくる温かみのある座面は「受け継がれる椅子」と調和し、正に太鼓判ですね!
 
 
 
 
上本健治(うえもとけんじ)
株式会社マルニ木工 営業本部 西日本営業部 部長
1971年生まれ、大阪府出身。大学卒業後、93年マル二木工に入社。入社後、営業部門へ配属。広島・福岡・愛知・東京・大阪の各拠点にて営業活動を行い大手との関係強化とビジネスの本質を学ぶ。19年4月より現職。バスケットボール・ラグビーなど学生時代はスポーツに励み、現在も休日は体を動かす。リフレッシュ法は休日の映画鑑賞とスポーツ観戦。座右の銘は「勇往邁進」。決めた事や夢に向かって、まっすぐ前に進むように生きていく事が好きです。
 
 
 
構成_丑番眞二
 

 

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