【第34回】コンシェルジュ河出の世界文学よこんにちは『はじめて読む!海外文学ブックガイド』越前敏弥、金原瑞人、 三辺律子、白石朗、芹澤恵、ないとうふみこ /河出書房新社
翻訳者は橋を渡す『はじめて読む! 海外文学ブックガイド』
今、私の手元には『世界が若かったころ(ジャック・ロンドン ショートセレクション)』(理論社、ジャック・ロンドン著、千葉茂樹訳)がある。なぜかと言うと、今回取り上げる『はじめて読む! 海外文学ブックガイド』で紹介されていたからだ。
「この男のやっかいなところは、想像力が欠けていることだった」(p.34)
そんな気になる一節が紹介ページの最初に掲げられている。そしてはじめて訪れる極寒の地を旅する上記の「この男」に災難が降りかかり、更に「大変な事態が起こるのです」「なにが起こったのか、ぜひ作品を読んでみてください」(p.37)。これはこれは、気になるじゃないか。読まねば。そういうわけで、私の手元には今、一冊の本があるのである。
これは、本書『はじめて読む! 海外文学ブックガイド』が、本と読者を繋ぐ「橋」となったということだ。本書で紹介されているのは四十八冊の本である。ということは、この本を一冊読むことで、多くて四十八本の橋がかけられることになる。外国語で書かれた本を見つけ出したのも、それを日本語に翻訳したのも、この本でそれらの本を紹介しているのも、みな翻訳家だ。翻訳家がいるからこそ、それらの本の世界――その本の中にしか存在しない世界、あるいは一度も訪れたことがなく、これからも行く機会がないかもしれない国――に、私たち読者はいとも簡単に足を踏み入れることができる。
「日本にはない外国の食べ物や習慣が読者にも想像できるよう描写方法をひねりだしたり、外国のジョークを笑ってもらうために一日じゅうウンウン苦しんだり、世界のどこにも存在しない未来の技術や機械をそれらしい日本語にするのにああでもないこうでもないと考えつづけたり、そんなことをしてまで本を紹介することに執念を燃やして」(p.7-8)いる翻訳家たちを称えたくなる、本への愛情がこもった一冊である。
この本があなたに橋渡しをしてくれるのはどんな本だろうか。楽しみに読み進めてほしい。