【第30回】コンシェルジュ河出の世界文学よこんにちは『サムデイ』デイヴィッド・レヴィサン/小峰書店
たぶん世界でいちばん不可能な恋への回答『サムデイ』
毎日違う人間の身体で目覚め、一日だけその身体の持ち主の人生を生き、次の日になればまた違う人間になっている――そんな毎日を送っていたAは、ある時リアノンという少女に出逢い、恋をする。一つの身体に留まることのできないAにとってそれは、あまりにも不可能な恋だった。
前作『エヴリデイ』は、不可思議な運命を生きるAがリアノンに恋をし、毎日別の誰かになってしまうという障害にもかかわらず、彼女とこれまでにない特別な関係を築くにはどうすればいいかという問いに取り組む様を描いていた。『エヴリデイ』の続編にあたる本作『サムデイ』でふたりが直面するのは、一歩進んだ問いだ――すなわち、ふたりで築いた関係を続けていくには一体どうすればいいのか?
ある人物として一日を過ごした後、次の日にどこで、誰の身体で目覚めるのかがわからない。そんな毎日を送るAにとって、約束をすることは困難だ。「明日、何時に、○○で会おう」。誰もがするそんな約束さえ、時と場合によってはどうしても守れないことがある。では、他の約束ならどうだろう。たとえばあなたとずっと一緒にいるとリアノンに約束することが、Aにできるだろうか? 同じベッドで眠って朝一緒に目覚めることさえもできないし、ひとつ屋根の下で暮らすことは選択肢にさえならないのに。
リアノンには友人や家族がいて、居場所がある。彼女は一つの場所に留まり続けることができる。それに対してAは、その存在を知っている人さえごくわずかで、どんなに留まりたいと思ったところで、一つの場所に留まることはできない。そんなふたりが一緒に居続けるにはどうすればいいのか。
おいそれと他人に相談することもできないこの難題に、ふたりはふたりだけで取り組まねばならない。離れ離れになり、けれどやはりお互いを諦められず、途切れた会話を再開し、ふたりは話し続ける。どこにも正解が書かれていない問いに、自分たちなりの答えを出すために。それは他のどんな関係にも似ていない、ふたりだけの、ふたりのための関係を築くためにはどうしたって必要なことだ。そして、ふたりが出した答えとは――。
たぶん世界一不可能な恋の行く末をどうか見届けてほしい。