【第4回】間室道子の本棚 『噛みあわない会話と、ある過去について』 辻村深月/講談社
「元祖カリスマ書店員」として知られ、雑誌やTVなどさまざまなメディアで本をおススメする、代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ・間室道子。
本連載では、当店きっての人気コンシェルジュである彼女の、頭の中にある"本棚"を覗きます。
本人のコメントと共にお楽しみください。
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『噛みあわない会話と、ある過去について』
辻村深月/講談社
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季節柄、怖い話がテレビに登場し、書店でも怪談コーナーが作られる。
一方怪異ものにうさんくさい目を向ける人たちがよく言うのが、
「オバケやゾンビじゃない。ほんとうに恐ろしいのは人間なんだ」というせりふで、
他人への妬み嫉み、一方的な悪意がどんな犯罪を起こしてきたかをマジメに、
あるいは喜々として語り出す。
本書『噛みあわない会話と、ある過去について』はミステリのジャンルで言うと心理小説で、
「怖いのは人間」なのだが、今までにないテイストの四話。
対峙する人々の、記憶のずれがもたらす怖さなのである。
作者・辻村深月さんは、恐怖の萌芽を描くのがうまい。
読んでいくとどの話にも「あれっ」と思うところが出てくるのだが、
何が変なのかよくわからない。
登場人物たちも読み手と同じで、おかしいと思いながらも強く追及することなしに話は進む。
すると次の「あれっ」が出てくる。前よりいぶかしさは増しているが、
それでも重大事項とは思えず流してしまう。
一度芽が出た恐怖の成長は早く、「これは大変だ」と自覚出来た頃には、
主人公たちの日常は崩壊している。
そしてさあ、ここからが恐怖の始まりなのだ。
大学時代の友情を失う、教え子が本当は自分をどう思っていたかを知るなど、
主人公たちはぞれぞれ痛い目にあうが、「記憶違いをしていたんだから、仕方ない」ではすまない。
読者はページをめくり直し、探さずにはいられないのだ。
相手のほうが勘違いをしていないのか、主人公の記憶の方が正しいということはないのかと。
なぜなら、自分も同じかもしれないからだ。
私が親友の一人に数えているあの人は、私に暗い怒りを抱え続けているのかもしれないし、
私が恨み骨髄のあの人は、私に好かれていると思っているかもしれない・・・否!
ほんとうの恐怖譚とは、ぎゃああああああと叫んでぶん投げたくなるのではなく、
喉の奥から「ひーーーーー」と甲高い笛のような音を漏らし、体が固まる。
そんな本だと教えてくれる、気温30度超えの日にオススメの1冊。
一方怪異ものにうさんくさい目を向ける人たちがよく言うのが、
「オバケやゾンビじゃない。ほんとうに恐ろしいのは人間なんだ」というせりふで、
他人への妬み嫉み、一方的な悪意がどんな犯罪を起こしてきたかをマジメに、
あるいは喜々として語り出す。
本書『噛みあわない会話と、ある過去について』はミステリのジャンルで言うと心理小説で、
「怖いのは人間」なのだが、今までにないテイストの四話。
対峙する人々の、記憶のずれがもたらす怖さなのである。
作者・辻村深月さんは、恐怖の萌芽を描くのがうまい。
読んでいくとどの話にも「あれっ」と思うところが出てくるのだが、
何が変なのかよくわからない。
登場人物たちも読み手と同じで、おかしいと思いながらも強く追及することなしに話は進む。
すると次の「あれっ」が出てくる。前よりいぶかしさは増しているが、
それでも重大事項とは思えず流してしまう。
一度芽が出た恐怖の成長は早く、「これは大変だ」と自覚出来た頃には、
主人公たちの日常は崩壊している。
そしてさあ、ここからが恐怖の始まりなのだ。
大学時代の友情を失う、教え子が本当は自分をどう思っていたかを知るなど、
主人公たちはぞれぞれ痛い目にあうが、「記憶違いをしていたんだから、仕方ない」ではすまない。
読者はページをめくり直し、探さずにはいられないのだ。
相手のほうが勘違いをしていないのか、主人公の記憶の方が正しいということはないのかと。
なぜなら、自分も同じかもしれないからだ。
私が親友の一人に数えているあの人は、私に暗い怒りを抱え続けているのかもしれないし、
私が恨み骨髄のあの人は、私に好かれていると思っているかもしれない・・・否!
ほんとうの恐怖譚とは、ぎゃああああああと叫んでぶん投げたくなるのではなく、
喉の奥から「ひーーーーー」と甲高い笛のような音を漏らし、体が固まる。
そんな本だと教えてくれる、気温30度超えの日にオススメの1冊。