【お菓子博 旅のお菓子のお話】oshino-swseets

 
ある夜、日本人と恋に落ちたメキシコ女性、ラケルの作るタコスを楽しむパーティーに参加した。国境を超えて恋に落ちた2人の話に花を咲かせながら楽しんだパーティーの終わりに、ラケルのおばあやママが代々焼いてきた「コーンブレッド」をラケルがおみやに持たせてくれた。日本のみんなのために夜通し焼いてくれたと言う。がさりとした紙袋に2つ、きつね色のマフィンのようなケーキが入っていた。楽しかったメキシカンナイトのタコスやふたりの恋物語を思い出しながらあっという間に眠りにつき、目覚めた次の日の朝ごはんにと食べたコーンブレッドはそれはそれは、信じられないほど美味しかった。それはラケルが見知らぬ日本で愛するひとを見つけて焼いたコーンブレッドで、故郷を想い焼いたコーンブレッドだった。甘さは優しく、小麦粉と卵のしっとりとキメ粗目の生地のなかでコーンのプチリとした食感が楽しく素朴。噛めば噛むほどラケルがわたしの身体に溶けてゆく。メキシコのおばあやママが口の中で溶けてゆく。 完璧だ、と感じた。 私が作りたいのはこういうお菓子だ、とコーンブレッドを食べながらポロポロ泣いた。
 
わたしの旅するお菓子は「ラケルのコーンブレッド」  こころがメキシコを、ラケルを旅した想い出。
 

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